パラオ その2

maabo2005-08-24

・・・パラオ その1の続き
8月19日、今日も早朝5時にピックアップされ、夜も明けぬうちにボートはショップ前の桟橋を離岸する。 みんな眠い目をこすりながらも期待に胸を弾ませている様だ。 今朝は昨日の我々の話を聞いた他のゲスト達も参加しだして、2グループ2艇でインリーフを高速で「ブルーホール」へ向かう。 

それでも静寂を破るように、エンジンの音を周りにうならせているのは、「クルーズコントロール」で潜る我々だけしかいない。 いつもの競争相手で2番手になるはずの「パラオスポート」さえも、今の時期はフィリピンに行っていてここには居ないはずだ。 
6時52分、1本目のエントリー開始。 「ん?昨日より潮の流れが早い?ってオイ!、半端じゃないじゃんか!(汗)」 バックロールでエントリーして浮き上がると既に目の前にボートはいない程流されている。 バラバラにならないように、直ぐにヘッドファーストで潜行を開始する。 「昨日の倍は流れは有る」と気がついたのはガイドの"田中さん"が蹴るフィンキックが今までのものと明らかに違う、「真剣さ」が見えたからだ。 「ガイドもマジだな・・・」そう判断するのに時間はかからなかった。 水の中でさえもピリッとした空気が伝わってくる様な感じがした。 魚も回転しながら流されていて泳げないでいる模様(汗) みんなで転がりながらも棚にしがみつく事に成功したが、マスクが外れそうで顔を上げられない。 カレントフックだけでは流されそうなので指示棒も使いながら体を固定しようと試みたが、指示棒が見事に曲がってしまった。 

流れが速いからか魚が少ない。 残圧がみるみる間になくなっていくが、全員、後方のガイドの出方や指示が見えないでいる。 各自残圧が減る中、隣のゲストと顔を見合わせると、瞬時にアイコンタクトで、「我々だけでも独断で浮上したほうが良さそうだ」とお互いに意志を疎通し、判断した。 しかし、悪いことに、"ちー様"は、はるか前方の先頭にしがみついていて周りの状況も見えないし伝わらない。 俺からは距離がありすぎる。 そこで"ちー様"の後方につけていた、連日一緒に潜っている夫婦の旦那さんが、はえずりながらもなんとか伝えに行って肩を叩いてくれた。 "ちー様"も気付きこちらの方へにじりよってくる。 俺も流れに逆らい前進して"ちー様"の手を引き寄せ、BCの肩のストラップをしっかり掴ませた。 「残圧も40を切っている、よし行くぞ!」 凧の様に流されながらも所々で岩を掴みスピードを殺しながら棚から離れていくと、やっと視界にガイドの"田中さん"の姿が入った。 既に残圧の無い他のゲストをホールドしてバディーブリージングさせながら、「浮上」の合図を繰り返し送っている。 全員が無事エクジット完了、ボート上でホッと一息ついた。 先程の夫婦の奥さんの方はウェイトを落としたようだ。 ガイドの話では、「ヒエェェ!」今日の流れは10段階のうち12との事(汗) 2本目をこのまま続行するのはヤバイとの事でポイントを移動、「ブルーホール」へ。 「ブルーホール」は「ブルーコーナー」の直ぐ隣にあるが潮の流れは全く違い、「コーナー」が流れていてもあちらは穏やかとの事。 
エントリー開始! 上部に空いている穴の一つから中に入る。 透明度は40mオーバー。 ホールの中は神秘的で幻想的な空間が広がる、のんびりダイブ。 水深を深く取りすぎないように注意するが良い写真を撮ろうとすると、どうしても落ちなければならなくなってくる。 あらかじめカメラのホワイトバランスや露出のセッティングをしてから入っている。 魚影は少ないが「カッポレ」「フチドリハナダイ」「オトヒメエビ」「ミナミハタ」等がいる。 「ウコンハネガイ」を初めて見た。 外套膜をイナズマの様に薄紫の光で発光させている姿は妖しげだ。 

パラオの代表的地形スポットを満喫してエクジット、しっかり水面休息を取る。
3本目はパラオ最後となる「ブルーコーナー」をリベンジする。 流れは先程よりだいぶ穏やかになった。 エントリーすると、「居る居る」 「グレイリーフシャーク」や「ホワイトチップシャーク」 砂地に移ると前方に、今回のパラオダイブ中で一番大きい「ブラックフィンバラクーダ」の群れが! 先頭の行く場所を予測して先回りをすると群れが近づいて来た。 彼らは俺の目の前で巨大な壁となっていくが、興奮を落ち着かせてエアーの温存をはかろうと努力する。

続けて「ギンガメアジ」、こちらも今回最大級の群れ。 メタリックのボディーが光に反射して眩しい。  向こう側が見えないほどの群れに囲まれる。 いつのまにか群れと同化している自分がそこに居た。

充分すぎるほど満足できた、今回の「ブルーコーナー」に別離を告げてボートはショップへと引き返していく。 まだ興奮が収まらない、アドレナリンが分泌しているのがはっきり解る。 誰もがここへ潜れば「パラオ」を語られると言っていた・・・全てのダイバーが目指す場所・・・その意味が今になって理解できた・・・
ショップに到着するとカレーライスを頂いてログ付け。 精算を済ませてホテルに送ってもらう。 今回お世話になった「クールズコントロール」の皆さん、特に"田中さん"と見習い修行中のアシスタント"加藤くん"、「素晴らしい想い出をどうも有り難う!! 」

夜はマラカル島に渡る橋のたもと、オープンエアのレストラン「ジャイブ」でお食事。 ミナトバシを行き交う車のヘッドライトがロマンティックな雰囲気な演出に一役買ってくれている。 ホテルに戻りマッサージをうけて就寝。
最終日、今日は「ドルフィンズパシフィック」で「イルカ」とスキューバダイビングの予定。 パラオ政府の認可を得て、イルカの調査と研究を目的に設立された「ドルフィンズパシフィック」では、世界でも数少ない、「イルカ」と一緒にスキューバ器材を付けてダイビングできるプログラムを組んでいる。 マラカル島のオフィス(今年6月に開業したばかりの日航パラオ・ロイヤル・リゾート」の向かい側)で、あらかじめ日本から1ヶ月前に予約しておいた受付を済ませ、専用桟橋からボートに乗ってロックアイランドの島影の一つ、まるで秘密基地のような施設を目指す。 お世話してくれるのは「ネコマリンダイブ」の白人"バート"、日本語はわからない様子。
 
施設は、全長800mというフロートと「バイ」*1を模した建物で構成されている。 到着後は、まず「イルカ」の生体についての詳しいレクチャーである「クローズエンカウンター」なる講義を受けなければならない。 

この施設の「イルカ」は「バンドウイルカ」で全部で8頭、鯨の捕鯨基地で有名な日本の和歌山県太市町から空輸されてきたらしい。 スタッフは半数以上が日本人のボランティアである。 イルカの餌は雄のししゃも。 

「イルカ」の体をなでたり、キスをしてもらいながら触れ合っていく。 施設にやってきた、ドルフィンシュノーケル目当てで来た20人以上のゲストが見守る中、我々3人と"バート"だけが器材を装着する、ドルフィンダイブは1日限定4人までで、この日のゲストは我々夫婦と別に一人で参加の女性だけ。 準備を終えて、1番大きいプールへエントリーする、水深は9m弱、水底は白砂だ。 砂を巻き上げないように注意しながら着底する。 一緒に遊ぶ「イルカ」の名は「アリエル」と言う。 着底してしばらく待っているとインストラクターが「アリエル」を連れてやってきた。 水中で「イルカ」と触れ合える感動の時。 

まずは"ちー様"が餌を3回ほどあげ、続いて俺。 口の中をさわらせて貰うと歯が可愛い。 事前に教えて貰っていたハンドサインをすると、それに併せて「アリエル」が首を振ったり、ヒレをばたつかせる。 そして片手をゆっくり上に掲げると、それを見た「アリエル」は上空の水面に向かって凄いスピードで急上昇、水から飛び出してジャンプして戻ってくる。 水族館などで観客席から水面をジャンプする「イルカ」は何度か見たことがあるが、水の中から飛び出して行く「イルカ」を見上げるのは感動だ! 「アリエル」と充分に遊ぶと最後に防水性の「アリエル」の顔写真入りの名刺をイントラの手から受け取って、一人一人に水中で口で渡してくれた。 イルカは本当に賢い事が判った。 目一杯「ドルフィンズパシフィック」で楽しんでマラカル島へ戻り、近くのオープンエア「リップタイドバー&グリル」でビールをやり、のどを潤す。 

その日の夜は北インド料理の店「シーホースレストラン」でディナーを頂き、ホテルのプールでゆっくり疲れを癒した。 パラオ出発は夜中の3時半。 空港に向かいながら、楽しい想い出をくれた楽園「パラオ」に「さよなら」を言った。   「完」

長々と御愛読有り難う御座いました。
 

*1:バイとは、草葺きの三角屋根の建物で昔は集会所としての役割があったパラオらしい歴史的建造物